慢性中耳炎(慢性穿孔性中耳炎)

慢性中耳炎の原因は?

慢性中耳炎(慢性穿孔性中耳炎)は中耳に起こった炎症が慢性化して、中耳の粘膜や骨が侵される病気です。

大きな原因としては2つあります。

① 慢性中耳炎は、急性中耳炎が完全に治らずに細菌感染が続いていたり、糖尿病など体の抵抗力が弱って炎症が治まりにくくなっているなど、さまざま原因が複雑にかかわりあって起こります。中耳の発達が悪い場合や、鼻やのどに慢性的に炎症があることなども慢性中耳炎の原因となります。特に鼓膜の一部が破壊されるような進行を起こすひどい炎症を伴った中耳炎の際にみられます。結果、鼓膜には大きく穴が開き、耳小骨や鼓室(鼓膜の奥の空間)などにも病変が及ぶため、治癒しづらくなります。

② 鼓膜の奥の空気の溜まる場所(中耳蜂巣)の発育が何らかの原因で抑制されることによって起こる場合があります。生まれつきの体質の問題、もしくは乳幼児期の中耳炎により空気の溜まる場所の発育が抑制されると、中耳は炎症に対する抵抗が弱くなり、また修復力に乏しいので急性中耳炎が慢性化してしまいます。

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以上の2つの大きい原因の他に抵抗力が弱い方(糖尿病、甲状腺機能低下症、免疫不全症など)や口蓋裂、また、鼻・副鼻腔・アデノイド・扁桃腺なども慢性的な炎症や中耳炎の慢性化を助長するものとなります。混合感染が多く、黄色ブドウ球菌や緑膿菌、また、最近では耐性菌(MRSA)なども多くみられます。

慢性中耳炎の症状は?

鼓膜に穴があき、耳だれが反復もしくは持続して出現し、また難聴が認められます。普段は耳の痛みはないか、あってもそれほど強くありませんが、急性化膿すると痛みが強くなります。ひどい場合には、頭痛や発熱を起こすこともあります。
慢性中耳炎は放置するとめまい、顔面神経麻痺、髄膜炎(脳膜炎)、脳膿瘍(のうのうよう:脳にうみの袋ができる)を合併したり、また真珠腫性中耳炎(しんじゅしゅせいちゅうじえん:耳の奥に白い塊ができ、骨を破壊しながら増殖していく困った中耳炎。手術が必要)など恐い病気になる場合があります。

慢性中耳炎の治療法

治療は抗生物質の内服、点耳療法、耳の洗浄などを行います。

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鼻が炎症の原因となっている場合は鼻の治療(ネブライザーや副鼻腔洗浄)も併せて行います。最近は耐性菌が原因となっているケースも多い為、耳や鼻から細菌を検出後、それに合わせた薬を選択します。その為、治癒させるのに時間がかかるケースがあります。
しかし、こうした治療を行ってもなかなか耳だれが止まらない、鼓膜の穴が大きくなって音を内耳へ伝える中耳の小さな骨の連鎖にも異常が起き、聞こえにくくなった時には、炎症を起こしている病巣を取り去り、鼓膜を再建する「鼓室形成術(こしつけいせいじゅつ)」と呼ばれる手術が必要になる場合もあります。
また、真珠腫性中耳炎や、癒着性中耳炎の場合は手術をお勧めする可能性が高くなります。

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慢性中耳炎治療の注意点

① 耳だれが完全にとまるまでの治療期間には個人差があります。耳だれが出ていた期間が長いほど、なかなかとまりません。なかなか、とまらないから・・・と通院をやめてしまうと、いつまでたっても治りませんし、将来的に手術になる可能性が高くなります。

② 普通,毎日通う必要はありませんが、なかなか耳だれがとまらない場合は、毎日耳の中を生理食塩水で洗います。

③ 耳だれが止まっても治ったわけではありません。鼓膜の穴は残っています。その後も2~3ヶ月に1度は定期的に通院していただき(可能なら1 ヶ月に1 度が理想です。)、経過をみてゆくことが理想です。そして1年に1度は聴力検査を行います。

④ 入浴は耳痛、頭痛、多量の耳だれや発熱がある間は控えてください。

⑤ 慢性中耳炎は鼻やのどの炎症から起こるケースが多いため、鼻やのどの治療も同時に行います。

⑥ スイミングは耳だれが出ている間は控えて下さい。耳だれが止まっていれば、スイミングは可能です。ただし、慢性中耳炎の方は鼓膜に穴があいているため、耳に汚い水が入ると炎症を起こし、耳だれが出ますので、防水のための医療用の耳栓をしていただきます。

⑦ 慢性中耳炎の方の中には、補聴器を装着することによって聞こえが大幅に良くなる方がみえますので、難聴でお困りの方は、補聴器を装着することをお薦め致します。

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